興味のない街と映画館
東京に住んでいる田舎者としては,「せっかく東京にいるのに!」みたいな貧乏性なところがどこかにあるとおもう。
私の場合,「ここにいったことがないからいきたい」「ここ,押さえとこう」みたいな意味のわからない衝動にかられる。ちなみに東京タワーはいったことがありません。
先日友人の家探しに付き合った。友人は板橋に住んでいて,その近辺から出たくない,とのこと。
私は新宿〜渋谷〜三軒茶屋界隈に住んでいる(住んでいた)ので,池袋近辺に関してはまったく土地勘がなく,彼女と,井上芳雄をぼんやりさせた感じの不動産屋のお兄さんと池袋のまわりをぐるぐる(雨の中)(しかも徒歩で)回ることになった。
おもに東上線に乗って移動し,三田線界隈に移動,山手線で池袋に戻ってきた。池袋近辺に土地勘のない女は「大塚は山手線がとまるのに乗り換え路線が1つしかない」ということをそこで初めて知った。
不動産屋と友人の相談を聞いているうちに,自分には無意識に「興味のない街」が存在することに気づいた。そこに行きたいところがない。だから興味がない。知ることもない街。逆に,行きたいものがあれば,「こんなところにこんなものが」って具合で興味が湧く街。その興味の中心が,映画館だってことに気がついた。
映画館がある街,というのは,文化的環境が整っていると思う。
ミニシアターがある街は特に,その色がちゃんとしている。
逆に,シネコンのある街(なかでも,特に特色のないシネコンがある街)は街と映画館の境目がくっきりしていて,シネコンが浮いて見える。なので,あまり街を知るきっかけにはならない。
映画館がある街として特に面白いのは三軒茶屋だったんだけど,残念ながら映画館はつぶれてしまった。まるで街の銭湯のような,いこいの場としての役割を果たしているとてもとても素敵な映画館だった。
立川のシネマシティはミニシアターとよぶのが失礼なほど,施設としてかなりハイクオリティだけど,映画館と街がちゃんとつながりをもって存在しているような気がする。
映画館にいくことが,街をしるきっかけになっているような気がする。
たとえ知らない街の話題のカフェやレストランに行ったって,これと同じような体験ができるか,といったらそれは絶対に違うとおもう。「わざわざ遠方から足を運びました」って人がそこにはたくさんいるんだから。映画館はよほどの変態じゃないかぎり,近場で済ますと思うんだよね。
そんなこんなで,興味のない街というものが存在する。
でも,ふとしたことで興味のある街に変わることも否定出来ない。
興味あった街が興味のない街に変わらないようになればいいな,とちょっと思います。